libra05's blog

映画を中心に、好きなものについて自由気ままに書いています

映画「グッド・ライ〜いちばん優しい嘘〜」の感想(と簡単なあらすじ)

ある朝の通勤途中のことです。
エレベーターに急いで飛び乗ると、視界の先に女性の姿がありました。
見えていたのはエレベーターの壁であるガラスの向こう。壁に寄りかかり、うずくまった女性がそこにいたのです。

大変!と、エレベーターを降りてそちらに行こうとした時、女性にもう一つの影が重なりました。
「大丈夫ですか?」
降りていくエレベーターの中からでも、そう優しく声をかけているのがわかりました。

日常生活でも、こういう人の親切を見かけたり、実際に親切を受けることがあります。そのとき、感謝だけでなく「『人』っていいよなあ」というポカポカとした気持ちになるものです。

そんなちょっとした優しさや何かを犠牲にするほどの大きな決断を伴う優しさで紡がれた作品、それがこちらです。

www.goodlie.jp

ざっとあらすじ

南スーダンの内戦で家族や故郷を失った子どもたち。
難民キャンプからアメリカ各地へと移住をした彼ら「ロストボーイズ」は、新しい文化・環境・人々に出会うことになる。

感想(ネタばれあります)

劇中で明確な分け方がされてはいませんが、今作品は3部構成であるように思います。

1全てを失った幼少期のロストボーイズ

2大人になり、自らの力で人生を切り開いていくロストボーイズ

3ロストボーイズに出会い、人生を変えていくアメリカ人のキャリー

今回は、この構成に沿って感想を書いていきます。

突然全てを失った子どもたち

それまで、無邪気に遊んでいた子どもたちの家、親たち、全てがあっという間に失われます。何が起きたのかもわからず、絶望と悲しみの中、生き残った兄弟たちは安全な場所を目指して、ただただ歩き続けます。

大人がいない心細さのなか、難民キャンプにたどり着くまでに、何度も危険な目に遭います。
乾いた銃声の音や息遣い。ほんの少し逃げ遅れただけであっけなく射殺される子どもたち。淡々とした描き方が、怖かったです。

これが戦争、内戦の現実なんですね。辛かったけど、ちゃんと観なきゃ、と力が入りました。

大人になり、自らの力で人生を切り開いていくロストボーイズ

アメリカにやって来たロストボーイズ。ここからは子ども時代とは一転し、緊張感がなくなり、のんびりとした雰囲気になります。

公式ホームページでは、電話を使ったことがなく、音が鳴っても放置。牧場を見ると「猛獣はいますか?」と確認する…など、彼らがアメリカの生活で奮闘する様子をクスッと笑えるポイントとして挙げています。
確かに面白いです。でも、それと同じように、彼らの素朴さ、誠実さがこの作品を貫く大事なポイントであると思います。

内戦で故郷を追われた移民であることを自分から明かすことはなく、いつか兄弟がみんなで暮らせる日を夢見て、目の前の環境に慣れようと奮闘します。
そして何かあるごとにしっかりと感謝を伝え、見返りを求めない親切をします。

その姿が、彼らに関わる人をポカポカとした気持ちにさせてくれるんですよね。ラストに向けて、キャリー(下記参照)の生き方さえも変えていくという展開にも無理がなく、納得です。

ボーイズの一人であるマメールは、難民キャンプへの道中で自分をかばって死んでしまったと思っていた兄と、奇跡の再会を果たします。ただ、出会えた場所はかつて自分たちがいたあまり環境のよくない難民キャンプでした。
結局、(確かビザが取れず、)アメリカへの受け入れ枠がなかったため、マメールは兄の身代わりになり、自分が難民キャンプに残ることを決めます。

一度手にした住みやすいアメリカでの生活。これを手離し、自分が犠牲になってでも病気の兄を渡米させたマメールの優しさが最大の見所です。

でも、ここも淡々と描かれているんですよね。無理に感動的にする演出がないんです。そのせいで、余計に響いてくるんです。

マメールは本当にアメリカには戻ってこないまま、物語は終わってしまいます。

えー!マメールもみんなも、子どもの時から過酷な人生で一生懸命頑張ってきたのに!全員一緒に住まわせてよ!!と映画のハッピーエンドに慣れている頭でつい感じてしまいましたが、現実から考えると、きっと、この展開でも十分にハッピーエンドなんですよね。
これでもまだ、救いのある物語になっている。なんだか、そう突きつけられ気がします。

ロストボーイズに出会い、人生を変えていくアメリカ人のキャリー

キャリー役を演じるのはリース・ウィザースプーンです。私はいつ見ても、彼女からビシビシと「姐さん」なタフさを感じてしまいます。
なので、ロストボーイズのためにたくましく奮闘する今回の役柄は彼女にとてもぴったりで、「演じている」とは思えないくらいでした。

誰と一発ヤレば移民局の偉い人に会える?

(キャリーのセリフ)

これですよ、この感じ!何時間も並んだ挙句に、直訴したい相手に会えないかもしれない状況でのこの一言は、「姐さん!」っぷりが光っていました。

さて、キャリーは、渡米時に姉と離ればなれになってしまったロストボーイズのために、その彼らの姉を自分の家に受け入れることを決断し、本当に実現させます。
ここでも、ドラマチックな演出や急展開はありません。すこしずつ彼らに心を開き、献身的に彼らに尽くしていく過程をゆっくりと描いてくれています。

こんなときに観たい

ロストボーイズの優しさと彼女の優しさ、さらにその様子に動かされていく周囲の仲間たちの優しさ。
大げさでご都合主義の展開ではなく、作品のなかでゆっくりと波紋のように広がる優しさを見て、「『人』っていいよなあ」というポカポカした気持ちを噛み締めたいときにとってもオススメの作品です。


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